【インタビュー】「ガチアクタ」プロデューサー様に聞く/海外で人気を呼び起こしたチーム一丸戦略

国内のZ世代だけでなく、海外でも高い支持を集めるTVアニメ『ガチアクタ』。Crunchyrollの2025年7月クール視聴ランキングでは世界1位を記録するなど、その勢いは盛り上がりを“逆輸入”するほどになっています。原作の人気を背景に、アニメ化当初から明確に掲げられた「海外を強く意識した戦略」がありました。なぜ今、『ガチアクタ』は世界に刺さっているのか、どのような施策が海外での熱狂につながったのか、作品の魅力とグローバル展開の裏側について、宣伝プロデューサーを務めるエイベックス・ピクチャーズの松田尚子さんに詳しく伺いました。
本作は当初から海外戦略を意識していたと伺いました。どのような狙いと施策があったのでしょうか。
松田様:
まず原作コミックスが、海外で非常に人気の高い作品だったことが前提にありました。アニメ化に際しても、「海外を強く意識して動いていこう」という方針が当初から明確にあり、製作委員会とも相談しながら海外にどれだけ注力すべきか、KPIや目標設定を行ってきました。宣伝幹事である当社が中心となり、通常のアニメ宣伝よりもかなり大きな予算を投下して、海外プロモーションに力を入れてきました。

原作が海外で人気となっていた理由は、どの部分にあると分析していますか?
松田様:
一番は、圧倒的な“絵の力強さ”だと思います。また、海外で好まれる「下克上ストーリー」、弱者がのし上がっていく構造も響いていると分析しています。本作の特徴として、作中に用いられている“グラフィティ表現”があります。原作者(裏那圭)と、グラフィティデザイナー(晏童秀吉)のお二人だからこそ生まれた表現で、背景や小物、キャラクターの持ち物にまでグラフィティが施されている。1コマ1コマが美術作品のように見えるという点で、海外の人々の心を掴んだのだと思います。

海外戦略を進める上で欠かせない要素となったのは何でしたか?
松田様:
大きかったのは配信プラットフォーマー、特にCrunchyroll(米)やメディアリンク(羚邦集団/香港)などの存在です。彼らが各国でのイベントを積極的に開催し、我々も可能な限りスタッフやキャストを現地に送り、共同で盛り上げました。ただ情報を渡すだけではなく、「海外で一緒に盛り上げよう」というスタンスを取ったことが成功につながったと思います。また、原作元である講談社も海外発信に非常に積極的で、原作者自身も英語でSNS発信するなど、関係者全員がチーム一丸で「世界に届ける」という姿勢で臨みました。結果、Crunchyrollでは視聴数世界1位を獲得し続けている状況になっています。

現在日本では第1期(2クール)の放送が終わりましたが、手応えは?
松田様:
大きな手応えを感じています。放送前から「逆輸入するくらい海外で盛り上げよう」という宣伝方針を掲げており、それが実際に成果につながっています。TVアニメでは視聴率がトップクラスでしたし、SNSでは特にTikTokのフォロワー数が一番多く、次にInstagramのフォロワー数が伸びているんです。これは、若年層や海外ユーザーに強く受けている結果だと分析しています。通常のアニメファン層より、ビジュアルやかっこよさ、クールさを重視する層に刺さっているというのが、海外戦略の成果だと考えています。

主題歌も海外ファンへの訴求を意識したのでしょうか。
松田様:
Paleduskさん、Mori Calliopeさんはもともと原作先生方と繋がりがあったのですが、第1クール、第2クールのOPEDを担当してくださったアーティストの皆さま全員、原作の世界観に惚れ込んでいて、制作にも深く入り込んでくださったんです。結果、作品の魂に寄り添う楽曲が生まれました。Paleduskさんに関しては、当初、作品の世界観に寄せることを一番に意識していたようですが、進めるうちに、ご自身たちの音楽の方向性とこの作品がすごく似通っているということに気付き、ご自身たちの魂を入れた楽曲になったと伺っています。

海外のファンは「ガチアクタ」という言葉自体をどう受け取っているのでしょうか。
松田様:
単語の意味というより、“言葉の響き”が好まれているかと思いました。短くキャッチ―で、海外イベントでも「ガチアクタ!」と叫んで盛り上がるほどです。ファンの中には日本語を勉強して意味を調べる方も多く、ドイツのイベントに市川さん(市川蒼/主人公ルド役)が登壇されたとき、通訳前に日本語だけで反応してくれる方々が多数いました。サイン会でも、「ガチアクタを通じて日本語を覚えました」というファンがたくさんいらっしゃいました。
今後の仕掛け・展開予定を教えてください
松田様:
先日の最終話放送後にいくつか大きな情報解禁をさせていただきましたが、まず、ゲーム化が決定しています。非常に高品質なアクションRPGです。また、舞台化も決定しており、2026年5月、6月に上演予定。さらに、アニメは第2期の準備も進行中です。2026年は、「めっちゃかっこいい!」「クール!」という直感的な興奮を軸に、グッズ、ゲーム、舞台と連動した展開を続け、熱量をさらに高めていく予定ですので、皆さん楽しみにしていてください。
貴重なお話をありがとうございました
プロフィール
松田尚子(まつだ・なおこ)
ウォルトディズニージャパンやキノフィルムズなどを経て、2017年エイベックス・ピクチャーズに入社。主な宣伝担当作品に、TVアニメ「フルーツバスケット」(2019~)、アニメ「スプリガン」(2023)、劇場アニメ『ベルサイユのばら』(2025)など。


©裏那圭・晏童秀吉・講談社/「ガチアクタ」製作委員会



